史上最強のSUVに試乗!JEEP GRAND CHEROKEE SRT-8

A-POWER 6月号掲載
文:桃田健史(IPN)
写真:佐藤安孝

スポーツカーキラー 遂に登場


街乗りからドラッグレースまでを楽々こなせそうな、迫力満点のスタイリングに、走る、曲がる、止まるの 3拍子がそろった現代風マッスルカー。 アメ車はおろか、世界中の超高性能車と対峙しても ひけを取らない性能とオーラである。 意を決したアクセル全開時は、まさに夢心地であった!
ジープがイメチェンの真っ最中だ。オフロード一辺倒から、都会派オンロードも含めた躍動的ブランドへと大変革中だ。そのフラッグシップが、グラチェロSRT8なのだ。独立系ブランドのジープは、我が道を行こうとする意思が強すぎたのか、経営面での紆余曲折。70年代に入ってAMC(アメリカンモータース)、そして80年代の旧クライスラーへと足元はフラフラ。90年代後半、ダイムラークライスラー傘下となりやっと地に足がついた。同社はまず、クライスラーブランドとダッジブランドの相互活用を促進した。そこに300C/マグナム/チャージャーの人気3兄弟が生まれたのだ。そしてもうひとつのブランド・ジープの手術がいま進んでいる。ジープの中心的存在はグラチェロだ。グラチェロといえば80・90年代、アメリカでも日本でも「ちょっと洒落た高級SUV」として人気を博した。だが、時はいままさに、SUV戦国時代。グラチェロのひとり勝ちなどあり得ない。そこで、グラチェロの兄弟が続々誕生している。兄貴分コマンダー。その敵はランドローバーだ。弟分は双子のコンパス/パトリオットだ。今のところ、コマンダーSRT8は実現しないと 予想される。ヘビー級のボディスタイルにSRTロゴは似合わない。また、コンパス/パトリオットはクライスラー・キャリバーとプラットフ ォームを共用。キャリバーSRT4 が現実化したいまでは、こちらのSRT化はまずないだろう。つまり、ジープブランドとしてグラチェロが唯一のSRTファミリーなのである。グラチェロSRT8のライバルはズリ、ボルシェカイエンターボ、BMWX5。だからグラチェロSRT8の風貌は「ジープとしては少し飛び過ぎでは?」と感じるほどアグレッシブだ。
そしてグラチェロSRT8は、SRTシリーズ唯一のAWD車だ。軽量&強靭化されたトランスファーが6.1リッターHEMI(420馬力)の大迫力をガッシリと捕まえる。ヘビーデューティのドライブシャフトにDANA44のリア強化デフ。その驚愕の加速は、0‐時速60マイル(約96キロ)で5秒を切る。これはカイエンターボ、BMWX5を凌ぐという超敏速だ。速さへの反作用として、ブレーキ強化もバッチリ。フロントにはブレンボ製4ピストン(360x32インチ。デカイ!)を採用している。さて注目の乗り味だが、残念だがこの原稿執筆時点で実現出来ていない。だが予想はできる。「これが動いたら、きっとこうなるはずだ」と…。実際にモノは見てるし、ドライバーズシートにも座っているから。エンジン音は、他のSRT8より大きい。これはSUVの車両骨格特性によるもの。乗り心地は、他のSRT8同様に見た目の凄さほど、硬めではない。「5秒を切る」加速感は、重くて視点の高いSUVでは「物凄いド迫力だ」。目の前の景色が早送りの映像に見える……。あくまでも予測だが、グラチェロSRT8きっとこの予測を上回る性能を体感させてくれるはずだ。何てったって、SUV大国アメリカが世界に誇るスーパーモデルだから。嗚呼、待ち遠しい。
エンジンルームのタワーバーやセンター2本出しマフラーを見る と、まるでチューニングカーのごとき「ヤル気」を感じるのは筆者だけだろうか。凄いオーラを感じるアメ車であった。

最近流行なのか?ブルー系の文字盤やメーター針を使うアメ車が多い。グラチェロSRT8も同様で、メーター周りの雰囲気が普通のアメ車とは違う一線を画したものになっている。
フル加速して急停車して、を繰り返している画。グラチェロSRT8は、AWDになっているため、ターニングサイクルが意外と大きい。またステアリングも若干重くなっている。だがこの加速を味わえばどうでもいいことなのだが…。

言葉にならないほど速い! 凄い! 欲しい!


まさに圧巻である。後述する300CSRT8と同様のエンジンを積み、そちらの方が車体が軽いはずだから絶対速いはずなのに、同時に乗り比べてみても、どうしてもグラチェロSRT8の方が速く感じてしまう。もう圧倒的に速い。たとえば、MTのC6コルベットが隣にいても、全開加速なら負けない、って感じるぐらい速い。けど、運転は全然楽。フツーにも乗れる。だからある意味不気味 な存在。反則!。今年のナンバーワンは間違いなしか!

スーパーセダンに試乗!伊勢湾岸最速サルーン



SRT-8シリーズの中でも群を抜いて運動性能が高いのは300Cだ。なんといってもサルーンボディがもたらす低重心が効いている。同じ超高性能モデルでも、たとえばせっかくのパワーが去勢されるAMGなどよりも荒馬っぽさを感じられるところも大きな魅力。その気になれば“ドリドリ”状態にも持ち込める痛快なサルーンだ!
300Cはラグジー・アメ車セダンの救世主だ。 ここ数年北米では、ラグジーといえばフルサイズSUVの守備範囲と なっていた。ラグジーセダンは、レクサス、インフィニティ、BMW、アウディあたりがアメ車たちを追い払って急激に売れてきている。特にキャデラック・セダンの衰退は大きい。それは単純に販売数を示すのではなく、商品イメージの問題だ。良くも悪くも、金持ち=キャデラックとか、リタイヤしたら夫婦仲良くフロリダに住んでフロリダナンバーのキャデラックで全米各地にドライブとか。そういう固定概念がす っかり崩れてしまった。だからキャデラックは、ちょっと趣向を変えてスポーティ路線のVシリーズを立ち上げて「名誉挽回」に躍起なのだ。こうしたキャデラックが失ったマーケットを、300Cはもの
の見事 に奪い取ってしまったのだ。アメリカ人が300Cを買う理由。それは「意外と安いのに、派手で立派に見えるから」。クライスラーのディーラーに行けば、3万ドル中盤で5.7リッターHEMIの新車がゴ ロゴロしている。メルセデスでこの値段だと、(北米では)C230が対抗馬。「Eクラスと中身は同じらしい」という評判が広まって「こりゃお買い得だ」と300Cは大いに売れている。ちなみにEクラス(W211) と同じなのは、リアサスをメインとしたプラットフォームの一部だけ。 で、300C SRT8となると、イメージ的なライバルはE55 AMG、に思われるかもしれない。だがこの2台、走りの雰囲気は全然違う。300C SRT8の搭載ユニットは6.1リッターHEMI。5.7リッターからボアアップ。圧縮比も9.6対1から10.3対11へ。シリンダーブロックの剛性強化、新規設定シリンダーヘッド内にハイカム、オイルシステムの効率化などにより、最高出力は425馬力。ミッションは、Eクラス(W211)と共用する5AT(インディアナ州ココモ工場製)。走行中の雰囲気は高回転型エンジンになってはいるが、やはりOHVっぽい加速感。下からドロっと湧き上がって力強さを維持する感じ。上への突き抜け感はそれほど強烈ではないが、そこまでの加速が十分速いから満足できる。対するE55 AMGはスーパーチャージャーの強制的加速感(とはいえ、ノーマルブーストではビックリするほどの加速感でもない)が特徴。ハンドリングはどうだ?ノーマル300Cの場合、タイヤと路面の接地感がドライバーに確実にフィードバックされる(良い意味で)。20インチを履くSRT8ではタイヤの硬さに、ハーフインチローダウンしたサスのシッカリ感が覆いかぶさっている印象だ。つまり飛ばせる。攻めモードになってコーナーに飛び込むと、ESPの介入が穏やかなのでドリドリと痛快なひと時を過ごせる。5.7リッターHEMIだとESPの過剰介入で安全運転に徹するしか手がない。ちなみに06年モデルでのお勧めは、新ボディ色のシルバースティールカ ラー。バンパー、ミラー、ドアノブなどがボディ同色のSRT8だと、この新色がやたら映える。

ちょい悪なスタイルに秘められた 420馬力超の野蛮なエンジンパワー


このクルマにおける最大の弱点が、5.7リッターモデルとの差別化が小さいということ。パッと見の識別が簡単に付かない。
そこがグラチェロSRT8との違いだろう。でも走ると強烈。ベンツなんて目じゃねーぞ!


本気モードでスポーツするなら…


今回ウイングオートで試乗した300C・SRT-8のエンジンは、これまでに試乗した個体よりも回転フィールがより緻密で鋭敏な印象だった。同時に乗り比べたグランドチェロキー・SRT-8はまったくのド新車で、300Cは3000kmほどオドメーターの針が進んだ状態だったから(普段から社長が鍛えているから?)かも知れない。本気モードでスポーツするなら、より重心が低いサルーンボディの300Cをチョイスしたくなる。悩ましい問題だが。