A-POWER 1月号掲載
文:細村智昭
写真:佐藤安孝
 
先駆者の面目躍如

かつてのアメ車は工作技術が稚拙と言われ、
高級車といえども日本車やドイツ車に比べると
クルマとしての完成度は低かった。

しかし、それもすでに過去のこと。

2007年のモデル改変を経たアメ車に、
その認識は当てはまらない。
ここにエスカレードとナビゲーターという
アメリカを代表するLuxury SUVの2台を揃えた。

この2台の2007年モデルを見れば、
その理由も納得できるはずである。

元々、ラグジュアリーSUVというジャンルを開拓したのはリンカーン・ナビゲーターである。 その直後にキャデラック・エスカレードが続き、

ヨーロッパや日本のメーカーもそれを追従する形となって現在に至っているのである。

ところが、いざその市場が世界的に定着してみると、アメ車の工作技術の低さを嘆く声を多く聞くようになった。

「高級車のくせに造りが雑」だとか、「見た目だけで中身はただのトラックベース」だといった酷評を筆者も何度か耳にしたことがある。

カスタムすることを前提としている我々アメ車ファンからすればそう目くじらを立てるようなことでもないのだが、

カスタムという発想のない欧州車からの乗り替え組は、口を揃えて「アメ車だから」と見下した物言いをしてくる。

そんな連中に、この07年モデルのエスカレードとナビゲーターを見せつけてやりたい、と今回の取材を通して本気で思った。

それくらい新型エスカレードとナビゲーターはレベルアップしているのである。



例えば、エスカレードについてメーカーは、「インパネのクラスター間のギャップは0.5ミリ以下で、ギャップが完全に取り除かれた箇所もある」と説明している。

こうした解説はこれまでのアメ車にはなかったことで、メーカーも工作技術の向上を必死にアピールしているのである。

確かにインテリアの造作は先代モデルと比べても圧倒的に豪華である。 先代エスカレードの売りはブルガリの時計だったが、 逆に言えば目玉はそれだけしかなかった。

そのブルガリの時計は新型で廃止されてしまったが、そんなことはすっかり忘れてしまうほど新型は豪華なのである。

もう1台のナビゲーターについても、ウッドパネルにはコクタンもしくは シルバー・ハートと呼ばれるアフリカ産のウッドが使われていて、

レザーとアルミパネルをうまく組み合わせてクラシカルで豪華なインテリアを演出している。 一方で、走りの性能についても格段に向上している。



07年モデルのGMのフルサイズSUVは、エントリーモデルを含めたすべてのクルマがグレードアップしているのでキャデラックだけが特別というわけではないのだが、

それでも新型の6.2リッター・ヴォルテック・エンジン新開発の6速ATなどは真っ先にエスカレードに投入されている。

ナビゲーターについては05年モデルで一新した5.4リッターのトライトン・ユニットやジャガーXJなどとも共用する6速ATをそのまま踏襲しているが、

フルサイズSUVの中では唯一独立懸架の足を持ち、その乗り心地と走行安定性は群を抜いて優れている。

以上のようなアップグレードに加えて、この2台にはアメリカンSUVだけが本来的に持っている

エクステリアデザインの迫力と、優雅で広大な室内空間とがそのまま残されているのである。

これだけは他国製のSUVには真似のできないアメ車ならではの優位性である。

これにより、ラグジュアリーSUVとしての真の資格はこの2台だけのものになったと言っても過言ではないだろう。

SPECIFICATIONS
■全長×全幅×全高:5293×2002×1989mm ■ホイールベース:3023mm
■車両重量:2753kg ■エンジン:水冷V型8気筒SOHC ■総排気量:5408cc
■最高出力:304ps/5000rpm ■最大トルク:50.5kg-m/3750rpm
■トランスミッション:6速AT・フロアシフト■乗車定員:7名
■サスペンション:F/ダブルウィッシュボーン R/マルチリンク(5リンク)

SPECIFICATIONS
■全長×全幅×全高:5143×2007×1887mm ■ホイールベース:2946mm
■車両重量:2570kg ■エンジン:水冷V型8気筒OHV ■総排気量:6199cc 
■最高出力:409ps/5700rpm  ■最大トルク:57.7kg-m/4300rpm 
■トランスミッション:6速AT・コラムシフト ■乗車定員:7名 
■サスペンション:F/ダブルウィッシュボーン R/5リンクリジット 


新型ナビゲーターに搭載されている5.4リッター・SOHCのトライトン・ユニットは最高出力304psと、エスカレードの409psと比べると非力さは否めないが、それを補って余りある独立懸架式の足回りが、優れた走行安定性と乗り心地を約束してくれる。

リアラゲッジの左側には電動テールゲートのスイッチが、右側にはサードシートの電動格納スイッチを備えている。エスカレードとは反対にセカンドシートは手動での格納となる。


今回のモデルチェンジで投入された新型の6.2リッター・OHVのヴォルテック・エンジンは400psを超えるパワーを有し、ミッションも先代の4速ATから一気に6速ATへと変更された。より乗用的で乗りやすくなったとも言えるが、アメ車らしい荒々しさは影を潜めてしまった。

フロントのオーバーヘッドにあるスイッチを使ってセカンドシートを電動で格納することができる。その代わり、サードシートのアレンジは手動で行わなければならない。